NURBSモデリングにおいて、角部のエッジを丸めるフィレット処理は非常に手間がかかる作業です。特に、製造上必要な微小なフィレット(例:工業製品における0.3Rのようなフィレット)を直接NURBSジオメトリで作成すると、モデルの複雑さが増し、元となる面の修正が困難になりがちです。これにより、修正変更に非常に多くの工数が必要になることがあります。
一方で、フィレットを全く施さないと、レンダリング時にオブジェクトのエッジが不自然に硬く見えてしまいます。現実世界の物体には多かれ少なかれ丸みがあるため、リアルな表現にはフィレットが不可欠です。
またフィレットがないと、同一サーフェスから分割した形状が並んでいる場合、一体の物体に見え2つの形状からできているようには見えません。


ソフトエッジとは? — 非破壊的な見た目の調整
Rhinoのソフトエッジは基本形状に影響を与えずに、レンダリング時の表示メッシュのみフィレットや面取り(ベベル)を適用できる、強力な機能です。ソフトエッジを使用することで、後から値を変更できるレンダリングメッシュモディファイアとして機能させることができ、選択したポリサーフェスの形状を変更せずに微小な角Rの見た目を調整できます。
ソフトエッジの適用手順
1.オブジェクトの選択: ソフトエッジを適用したいポリサーフェスや押し出しオブジェクト、メッシュを選択します。

2.プロパティパネルの表示: 「プロパティ」パネル(ショートカット F3キー) 内の「ソフトエッジ」アイコンをクリックします(オブジェクトを選択時のみ、表示されるアイコンなので注意)。

3.ソフトエッジの有効化: 「オン」のチェックボックスをクリックします。

以上で、ソフトエッジ効果が有効になります。基本的にコマンドの対象となる形状はポリサーフェスですが、面が折れていると認識できるものであればメッシュでも一部適用は可能です。

主な機能
ソフト値の自由な変更
プロパティパネルの「ソフト値」を調整することで、エッジの丸みを自由にコントロールできます。ここでの「ソフト値」は、実際のフィレットに相当する半径(R値)を意味します。適用するオブジェクトの大きさにより、適切な値が変わりますのでビューで確認しつつ変更ください。
下図は、「ソフト値」を0.5に設定した個所に、半径0.5の円を配置した図。0.5Rの円と同様のソフトエッジが掛かっているのが確認できます。

オン/オフの切り替え
「オン」のチェックボックスを切り替えるだけで、ソフトエッジ効果を簡単に有効/無効にできます。
フィレットと面取りのタイプ変更
「面取り」オプションを有効にすると、エッジは丸みを帯びるのではなく、シャープなベベルとして表現されます。

通常フィレットは大きいRから小さいRへと順番にかけていく必要があります。それと同様に小さいRのフィレットを適用した形状に大きい「ソフト値」を適用するとソフトエッジで作成されるメッシュが壊れることがあります。
0.5Rが掛かっている形状に、「ソフト値」0.3 を設定した場合は成立しますが、「ソフト値」1を設定した場合は形状自体が作成不可能なため、ソフトエッジ処理が適用されず、元の形状が表示されます。「強制ソフト処理」オプションを使用すると形状が破綻し、面が飛び出すなどの問題が発生する場合があります。


基本的には、意匠等に係る大きさのRは手動で作成し、最小Rのような箇所にソフトエッジを使用するのが良いかと思われます。
まとめ
ソフトエッジはあくまでレンダリングメッシュへの効果であり、NURBSジオメトリそのものが変わるわけではありません。
ただしソフトエッジ機能を使うことで、微小なフィレット処理に時間を掛けずに形状を確認することができます。また、この非破壊的なアプローチにより、NURBSジオメトリの複雑さを増すことなく、レンダリング時の見た目を向上させ、基本面の修正といったデザイン調整を素早く行うことができます。
便利な機能なので是非、ご活用いただけたらと思います。
補足1: ソフトエッジを適用したメッシュの抽出
オブジェクトを選択し、[ExtractRenderMesh]コマンドを使用することで、ソフトエッジ効果が適用したメッシュ形状を別途データとして取り出すことができます。

このメッシュは、他のCGソフトウェアでのレンダリング、簡易的な解析、またはSTL形式で出力して3Dプリントに使用するなど、様々な用途に活用できます。
補足2: 他のレンダリングメッシュモディファイアとの関係
Rhinoには、ソフトエッジ以外にもレンダリングメッシュに影響を与える複数のモディファイア(曲線パイプ、厚み、ソフトエッジ、シャットライン、ディスプレイスメント)があります。これらは以下の順番で適用されるため、適用順序によっては意図した結果が得られない場合があります。

1.曲線パイプ
2.厚み
3.ソフトエッジ
4.シャットライン
5.ディスプレイスメント
もしソフトエッジが正しく表示されない場合は、他のモディファイアの設定や適用順序を確認・調整してみてください。