【集中講座】RhinoとGISの連携:位置情報を扱う作業フローの整理と補完手段

これまでの連載では、Rhino × GIS の連携について、第1回では Rhino モデルを Rhino 側で位置合わせを行う方法を、第2回では GIS 側(ArcGIS Earth)でジオリファレンス(位置合わせ)を行う方法を、それぞれ具体的な操作手順として紹介してきました。これらは一般的に用いられる位置合わせの方法ですが、実際の業務ではどの手順を選ぶかそのものが重要な判断になる場面も少なくありません。
本記事では、操作手順そのものではなく、どの段階で位置情報を扱うかという判断の違いに着目し、Rhino × GIS における作業フローを整理します。

Rhino × GIS における作業フローと判断の分岐

Rhino × GIS の連携では、位置情報をどの段階で扱うかによって、作業フローの構造が変わります。これは単に使用するツールの違いではなく、どの視点を主軸に作業を進めるかの違いとも言えます。
たとえば、敷地や計画地が明確で、設計の初期段階から周辺環境との関係を確認しながら検討を進めたい場合には、Rhino 側でモデル作成と同時に位置合わせを行うフローが適しています。この場合、作業の中心はあくまで Rhino 上のモデルであり、設計者の視点から形状や構成を検討しつつ、その都度、周辺環境との位置関係を確認することができます。形状検討と位置確認を並行して進めやすく、モデルを中心とした内側の視点で設計意図を空間的に把握しやすい点が特徴です。

一方で、第2回で紹介したように、Rhino モデルを ArcGIS Earth に読み込み、Earth 側でジオリファレンス(位置合わせ)を行うフローでは、地図や 3D 表示と重ね合わせながら位置関係を確認します。この場合は、都市や地形といった地理空間全体を基準に、その中に Rhino モデルを配置して確認することになります。全体像を俯瞰しながら位置を調整できるため、地理空間を主軸とした外側の視点で、周辺環境や既存データとの関係を把握したい場合に有効です。

さらに、作業フローは扱うデータ形式によっても分岐します。データの形式や内容によっては、GIS 側ではそのまま扱いにくい場合があり、その際には Rhino 側での変換や加工を前提としたフローが必要になります。逆に、地理空間情報としての意味や整合性を重視する場合には、GIS を起点とした確認や調整が適したケースもあります。
このように、Rhino × GIS における作業フローは、「どのツールを使うか」だけで決まるものではありません。主軸となる視点(設計側か地理空間側か)、そして データ形式への対応可否 といった要素によって分岐します。どの方法が適しているかは、案件の内容や検討の進行状況に応じて整理することが重要になります。

Rhino単体での位置情報管理の限界

Rhino は、設計や形状検討に優れたモデリング環境ですが、地理空間情報を前提とした位置情報管理を主目的とするソフトウェアではありません。Rhino では、EarthAnchorPoint コマンド を用いてモデルに座標参照系を関連付けることが可能です。ただし、複数の座標系間での変換や、GIS ソフトウェアのような包括的な座標管理・解析機能は限定的であり、地理空間情報の管理を主目的としたツールとは性質が異なります。そのため、測地系や投影法といった座標系を意識した厳密な位置管理や、異なる座標系を持つ複数の GIS データとの整合性を保ちながら作業を進めることは、Rhino 単体では難しい部分があります。
また、GIS データを Rhino 側に取り込む場合でも、属性情報や座標系を保持したまま扱うことは想定されていません。結果として、Rhino 上では「形状として参照する」ことはできても、GIS データとしての意味を持った扱いはできないという制約があります。
このように、Rhino は形状検討を主としたツールであり、地理空間情報を管理・解析する役割は GIS 側にあります。Rhino × GIS の連携では、それぞれの役割を分けたうえで作業フローを組み立てることが重要になります。

Heron とは

このような Rhino 単体での制約を補完する手段として、Grasshopper 上で GIS データを扱える Heronがあります。Heron は、Grasshopper 上で地理空間情報を扱うためのプラグインです。緯度・経度をもとに地理空間情報を取得し、Rhino のモデルと重ね合わせて表示することができます。Grasshopper の定義の中で位置情報を参照できるため、Rhino での形状検討と GIS データの確認を同時に行える点が特徴です。
なお、Heron は各種 Web サービスを通じて地理空間情報を取得するため、利用するデータによってはインターネット接続が必要となる場合があります。また、Heron は位置情報を最初から固定することを前提としていません。形状検討を進めながら、必要なタイミングで GIS データと接続できるため、作業フローの選択肢が広がります。

作業フロー整理としてのHeronの位置づけ

Heron は、Rhino 側で位置合わせを行う方法や、ArcGIS Earth 側でジオリファレンスを行う方法に代わるものではありません。それらの手順を補完し、Rhino での設計作業と GIS データの参照をより柔軟につなぐ役割を担います。作業の進行状況に応じて、どのフローを採用するかを選びやすくなる点に、Heron を使用する意味があります。

Heronコンポーネント例

Heron をインストールする

Rhinoの「PackageManager」コマンドを実行し、Heronをインストールしてください。

またfood4rhinoからも、Heronのインストールおよび詳細を確認できます。
https://www.food4rhino.com/en/app/heron

※ Heron はオープンソースの外部プラグインです。AppliCraft では内容・動作・サポートは保証しておりません。また、使用に伴う不具合・損害等についても補償いたしかねますので、ご了承のうえご利用ください。

まとめ

本記事では、Rhino × GIS の連携において、位置情報を扱う作業フローの違いを整理し、その補完手段として Heron を紹介しました。
 作業フローは一つに固定されるものではなく、検討段階や扱うデータに応じて選択することが重要です。次回は、この Heron を使用して、Rhino と GIS を実際に接続する具体的な操作手順を紹介します。