ランドスケープデザインに特化した「Lands Design」には、GIS(地理情報システム)に関連するデータを扱う機能が搭載されています。「GISデータをインポート」と「DEMデータをインポート」という2種類のコマンドが実装されており、シェープファイルとDEM(数値標高モデル)を読み込むことができます。GISデータを扱わないCADユーザーにとって、あまり馴染みのないデータ形式であるため、本記事では、国土地理院が提供する基盤地図情報データからQGISを用いて、シェープファイルとDEMを作成する一例を紹介します。


シェープファイル
まずシェープファイルとは、ESRI社が開発した地理空間データのベクター形式であり、地図上の対象物(例:建物、道路、河川、土地区画など)を、形状データおよび位置情報とともに記録するためのフォーマットです。シェープファイルは、異なるGISソフトウェア間でのデータ交換を容易にするため、広く利用される中間フォーマットとしても機能します。この形式は複数のファイルで構成され、最も基本的な構成要素として以下の3つのファイルが必須です。
必須ファイル
.shp :図形データ(座標情報)を格納する主ファイル
.shx :図形のインデックス情報を格納するファイル
.dbf :図形の属性データ(テーブル形式)を格納するファイル
DEMデータ
次にDEM とは、地形の形状や標高に関する解析、さらには三次元的な可視化を行う際に、GIS ソフトウェアで広く用いられるデータ形式です。GIS における標高データは、一般的にラスターデータまたはベクターデータに分類されますが、DEM はラスターデータとして扱われ、連続したセルの各グリッドに標高値が格納されています。またTIFF画像に地理情報(経緯度や投影法など)を埋め込んだGeoTIFF形式で提供されることが多いのが特徴です。
QGIS
QGIS(Quantum GIS)は、無料で使用できるオープンソースのデスクトップ型GISソフトウェアで、地理空間データの表示、解析、編集を行うためのツールです。シェープファイルや標高データをはじめとする多様なデータ形式に対応しており、豊富なプラグインや拡張機能を活用して、空間解析やマッピングを行うことができます。QGISは下記のリンクからインストールが可能です。
※QGISにつきましては、弊社(Applicraft)での直接の取り扱いがないため、サポート対象外となります。ご不明な点がある場合は、QGISの公式サポートページやユーザーコミュニティ等をご参照のうえ、ご活用ください。
QGISでシェープファイルとDEMデータを作成する
そのQGISを使用して、国土地理院が提供する基盤地図情報データからシェープファイル(*.shp)とDEMデータ(*.tif)を作成します。
①基盤地図情報(基本項目/数値標高モデル)をダウンロードする
国土地理院が提供する「基盤地図情報ダウンロードサービス」では、「基本項目」および「数値標高モデル」といった地理空間データをダウンロードすることが可能です。「基本項目」は、道路・建物・等高線などのベクトル形式の地物データで構成されており、
「数値標高モデル」は、5mまたは10mメッシュなどの単位の標高データで提供されています。
いずれのデータも、主にXML形式にて提供されており、GIS等のアプリケーションでの活用が可能です。データの詳細については、こちらのページをご確認ください。
基本項目および数値標高モデルから、それぞれ任意のエリアを選択のうえ、該当データをダウンロードします。

②QGISでデータ変換 ※3.42.2のバージョンを使用しています。
●XML形式(基本項目) → シェープファイル
XML形式では、Lands Designに直接読み込めないため、まずはダウンロードした基本項目のデータを、下記の手順でQGISに読み込み、シェープファイルへと変換を行います。
手順:[レイヤ] > [レイヤを追加] > [ベクタレイヤを追加]
→データソースマネージャでソースを指定する


次に、読み込んだデータの中から、建物のフットプリント(ポリゴン)と境界線のデータ(ライン)をそれぞれシェープファイルとして書き出します。
手順:レイヤパネルから1つのレイヤを選択し、右クリック>エクスポート>新規ファイルに地物を保存
[名前をつけてベクタレイヤを保存]のウィンドウでは、形式・ファイル名・ジオメトリ型等を設定します。座標系(CRS)は任意に設定可能ですが、日本国内で多く使用される平面直角座標系の第9系(EPSG:6677)を指定しています。なお、Lands Design(Rhino)は地理の座標系には対応していないものの、平面直角座標系は単位系がメートル(m)であるため、Lands Designとのスケール整合性に問題は生じません。

●XML形式(数値標高モデル) → GeoTIFF
続いて、ダウンロードした数値標高モデル(DEM)データについては、下記の手順に従いQGISへ読み込み、GeoTIFF形式(*.tif)への変換を行います。
この作業には、QGISのプラグインである「QuickDEM4JP」を使用しますので、事前に以下の手順でプラグインをインストールしてください。
手順:[プラグイン] > [プラグインの管理とツール]
「QuickDEM4JP」のプラグインをインストールした後、[プラグイン] >[Quick_DEM_for_JP] のコマンドをクリックして、QuickDEM4JPのウィンドウを開きます。
該当のDEMデータを選択し、出力先などを設定します。※CRSは任意です。

Lands Designにインポート
シェープファイルやGeoTIFFデータの準備ができたため、最後にそれらのデータをLands Designへとインポートします。
●GISデータ(シェープファイル)インポート
※Lands Design(Rhino)の単位はメートルに設定する
手順:[Lands Design] > [地形作成] > [GISデータをインポート]
建物のフットプリント(ポリゴン)と境界線のデータ(ライン)をそれぞれ読み込むと以下のように表示されます。サーフェスとラインデータとして読み込まれます。

●DEMデータ(GeoTIFF)をインポート
手順:[Lands Design] > [地形作成] > [DEMデータをインポート]
DEMデータを読み込むと、原点に表示され、ジオメトリタイプはメッシュとして扱われます。

本記事では、Lands Designの機能理解を深めることを目的として、QGISを用いたシェープファイルおよびDEMデータの作成についてご紹介しました。QGISの操作手順は、バージョンや条件によって異なる場合がございますので、あくまで参考情報としてご活用ください。
また、同様のデータ作成は他のGISソフトウェアでも可能なため、別のワークフローでのデータ作成もお試しいただければ幸いです。ぜひLands DesignにシェープファイルとDEMデータを読み込み、ご活用してみてください。