ビギナーのための曲面モデリングセミナー(予告編)

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ビギナーのための曲面モデリングセミナー(予告編)

NURBS(ナーブス)モデラーなる道具が出現して、立体をデザインするなら最初から3次元でやってしまおうという流れが定着してきました。実際に本物を作ってしまう前に、見栄えや性能をコンピュータ上で評価できるのですから、工業製品などでしたら試作段階の無理無駄がどれだけ省けるか効果は絶大ですよね。
筆者はその昔、大手ガラスビンの製造会社に勤めておりました。多くの人に、お酒や清涼飲料、調味料はよく知られていますが、それを包んでいるガラスビンは、さほど関心をもたれたことがないでしょう。工業デザインの例としてコカコーラのビンが有名ですね。ロングスカートの女性のシルエットを模したというあれです。ガラスビンのデザインは、実は結構大変なのです。ビンの中身はたいてい味のあるものですが、味を見てもらう前にお店の棚からとってもらわなければなりません。商品としては中身で勝負と言いたいけど、現在の流通の仕組みからは外見でかなり勝負があるのです。人目を引くこと、手に取ってみたくなること、中身のイメージを十分に主張するものであることは、デザインの大切な要件です。でも、ビンメーカとしてはもっと大切な要件があります。
容量があっていること!

ウィスキーのビンを思い浮かべてください。
例えば、中身が720cc入って、液面がキャップのところから20mmの位置にくること、ガラスの重さは350gといった(工業)製品としての規格が求められます。
3次元で自由にぐにゃぐにゃした形をデザインして、一発で規格を満たすなんて神業です。デザインは自由に、でも規格をみたす最終設計(寸法)はきっちり押さえたい!
こんなデザイン・設計システムが(その頃)あればよかったのですがね。無かったので結局自前で作ることとなりました。その担当者が私でした。いつのまにか、ビン屋からCAD・CAM・CAEシステムの裏方として形状処理プログラム開発を生業とするようになり、現在に至っております。
システム開発側の人間として、これまでの経験を「エッセイ風」につづっていこうと思います。アプリクラフト社との打合せの結果、「ビギナーのための曲面モデリングセミナー」をというこタイトルで月1回、6回にわたり連載をさせていただくことになりました。折衷案として「文章をつづっていくうちに、実は、曲線や曲面、モデリングの仕組みを皆様にご紹介していた」ということにしたいなと思います。

このまま自己&業界の紹介
名前は「大野敏則(おおのとしのり)」と申します。性別はオス、年齢30代ぎりぎり 肩書きは、有限会社エムシースクウェアド代表取締役(日本で2番目に小さな会社です) 先のような経緯でCAD/CAM/CAEに関連するプログラムを開発するようになり、10年以上になります。会社を作って2年、将来はライノセラスのようなパッケージソフトを出すことを夢見ております。

ちょっとだけ業界を紹介します。
ライノセラスのような3Dデザインツールを開発するにはもちろん分業になります。

● デザイナーが欲しいツールのイメージ(仕様)を企画する人(ソフトウェアのコンセプトとか基本設計と呼ばれる中身を考える人です)
● モデルをコンピュータで扱うプログラムを開発する人(モデルは、所詮、数式と数字の山なのです。)
● ユーザが作りたい曲線や曲面を解として数学表現するプログラムを開発する人(この方面の数学が得意な人の出番です)
● モデルを美しく画面に表示するプログラムを開発する人(CGが充実しないとデザインツールにならないので)

筆者は、もっぱら(c)を受け持っております。
というわけで、直接使えるモデリングテクニックやライノセラスの裏業を紹介することはできません。ソフトウェア開発者の立場から(言い換えると、コンピュータに代わって!)3Dモデリングなるものを説明できたらなと思います。

あなたは 左甚五郎派? イサムノグチ派? それとも 唐山陶人派?
形状を作り上げる手法(モデリング)はいくつかありますが、共通するキーワードは(ちょっと無理して)彫刻(造形)家。

以下の例をご覧ください。左甚五郎の「眠り猫」は、木(ソリッド)を削って猫の形(モデル)を作りました。
イサムノグチの「ランプシェード(ほら、美術の教科書に載ってたやつ!)」は、あたかも球の表面に巻かれたようなひごに和紙(サーフェス)をはって形(モデル)を作っています。
唐山陶人の食器は、粘土をこねて形(モデル)を作っています。3Dデザインツールのモデル作成手法は、この3つのいずれかに喩えることができます。
デザイナーがどの手法に慣れているかによって、ツールの評価が分かれてしまいます。 それぞれ一長一短ありますのでデザインしたい対象にあわせて選ぶのが賢明ですよね。

 

左甚五郎
眠り猫
イサムノグチ
ランプシェード
唐山陶人

眠り猫の彫刻手法(ソリッドモデリング)
眠り猫の彫刻手法は、Pro/ENGINEER、I-DEAS、SolidWorks,SolidEdge等のソリッドモデラー代表される手法です。
最初に中身の詰まった立体(つまりソリッド)を定義しておいて、あとはそれをひたすら「のみ(彫刻刀)」で削ってモデルを作っていきます。
したがって途中経過のモデルはすべて「ソリッド」という状態です。
ひたすら削っていくのなら、途中経過のモデルはどんどんその体積を減らしていくのですが、そこはコンピュータの世界、「のみ」は、削るだけでなく盛り付けることもできます。 でも、こののみ、自由自在に操ることはできません。
「のみ」の動きは、システムで事前に提供されているパターン(これを「フィーチャ」と呼んでもOK)に限定されます。
「フィレット(ラウンド)」、「面取り」「穴」「ボス」「リブ」「スロット」などと呼ばれるパターンがのみの使い方(フィーチャ)としてよく出てきますね。
パターン内の操作でモデリングしていくことができれば、これは簡単!お手軽!便利!
自動車ならエンジン・駆動系の設計、樹脂製品なら意匠面でない側の設計に向いています。

ランプシェードのはりぼて手法(サーフェスモデリング)
ランプシェードの手法は、CATIAやUG、そしてライノセラスに代表される手法です。
針金や竹ひごで、全体の形の骨格を作っておいてそこに紙や布(サーフェス)を張っていきます。先にサーフェスをつくっておくケースもありますが、このときは、後づけで針金を付け足します。
針金(骨格)は、順序付けされた点を通過するように作るのが基本です。
あとづけで針金を付ける時には、サーフェスとサーフェスの交線を用いたりしますね。
最終的にに骨格とサーフェスのつじつまが合っていれば良いので、デザイナーによってはサーフェスを先に作っておくのを好まれる方も多いようです。
サーフェスを作るには「ロフト」「スイープ」「回転」「ブレンド」「外周辺から内挿」といったパターンがよく用いられます。
いずれの作り方も、元になる針金(曲線)を与えることから始まります。
この時の針金は、必ずしも最終骨格に用いられるものではありません。

余談になりますが、NURBSという数学表現は、「滑らか」な針金やサーフェスの形を作る時(コンピュータが裏で計算する時の話で、ユーザから見た操作性ではないのですが)とても有効なのです。
NURBSをベースとしたモデラーの強みはここにあります。

サーフェスがバラバラに張られている状態は、「サーフェスモデル」と呼ばれます。
ランプシェード全体のサーフェスを張り終え、ボールのようになったとき(ばらばらに張ったサーフェスが閉じたとき)ソリッドになります。

デザイナーが針金の骨格を工夫すれば、(実は、ここにデザインのセンス以前に、ツールを使いこなすセンス+忍耐?が求められてしまうのですが...)自由に曲面形状を作っていくことができます。
自動車、家電ともに意匠面のデザインに利用されます。手間がかかりますが、実用に耐える工業製品をデザインするには有効な手法です。もちろん、フィーチャパターンにない形状を作るにはこれしかありませんね。

土細工の手法
この手法はLatticeDesignerに代表される手法です。

塑性変形できる材料の表面を押したり引いたりして形をつくっていきます。
デザインツールとしては、材料表面にメッシュ(三角形、四角形その他、荒いのや細かいのいろいろタイプあり、メッシュが直接材料表面に乗っているとは限らない)が定義されていて、そのメッシュを動かしていきます。
ぐにゃぐにゃした形状を簡単な操作で作成、編集できるのでCGのキャラクターデザインに向いています。

工業製品への応用事例はこれからかな?

(Latticeのイメージ。イラストはLattice関連のページから借用)

代表的なシステム例として有名なCADシステムを挙げております。ほとんどのシステムは、彫刻手法も張りぼて手法も使えます。これまで、どちらの手法を得意としていたかという程度の基準で分類しております。

次回からの連載予定
以下にこれから、ご紹介していきたいテーマをあげます。
コンピュータ上でモデルを扱う背景が分かれば、ライノセラスのモデリングコマンドを上手に駆使できるようになるでしょうし、後工程(CAD、CAM、CAE)のシステムと相性のよいモデルを作っていけるはず!?

第1回 パラメトリック曲線・曲面
線を引く、面を張るってどういうこと?

第2回 NURBS(ナーブス)曲線・曲面
なんで制御点があるの? ノットってなあに?

第3回 トリム曲面
本当は4角形の曲面を輪郭に沿って切り取る仕組み

第4回 BREP(ビーレップ)境界表現
ライノセラスでソリッドモデルをつくるということは!

第5回 位相と幾何の調和
ライノセラスでデザインしたモデルを他のシステムに渡すなら知っておいてほしい